鹿児島の地の恵みを、未来へと繋ぐ。
小牧蒸溜所は、薩摩半島のちょうど付け根、鹿児島市と出水市の中間にある鹿児島県さつま町に位置しています。
蒸溜所を営む小牧家の歴史は古く、16世紀まで遡ります。過去には味噌や醤油、茶の製造を手掛け、この100年余りは焼酎づくりにフォーカス。どの時代においても鹿児島の大地が生み出す自然の恵みを、新しい食のかたちへと変えてきました。
北の空に霊峰・紫尾山を望む美しい田園風景に製造拠点を構えていますが、その源こそが石蔵のすぐ脇を流れる雄大な川内川の流れです。
川内川とその支流である穴川に挟まれた場所で、私たちは代々、川に流れ込む紫尾山系の天然伏流水を活用したものづくりに徹してきました。この一帯の水辺は、清らかな清流にしか育たない県の天然記念物の水草「カワゴケソウ」が自生するエリアとしても知られ、その風景をみるたびに、いかに貴重かつ豊かな環境のなかに生き、ものづくりを続けていられることをとてもありがたく感じています。
その一方で、川内川は全長137km、流域面積1,573㎢ととても大きく、筑後川に続いて九州で2番目の規模を誇る川であるため、大雨が降ると一気に水かさが増し、頻繁に氾濫を起こる暴れ川としても有名です。かつて私たちも氾濫のために何度も事業の存続が危ぶまれました。しかし、過去にしがみつくことなく、挫折こそが先に広がる未来を作り出すものと信じ、再建に取り組んできました。
ひとたび間違えば壊れてしまう儚い存在でありながら、同時に抗うことができないほど力強さを見せる自然。私たちは、自然への感謝と畏怖を心に刻み、現地点で自分たちができること、すべきことは何かを考えながら、酒造りを続けています。
Text: 猪飼尚司 / Photo: 白木世志一
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