深みと円熟味を引き出すプロセス
品質を決定づける蒸留に関しては、麦芽の粉砕手法や糖化の工程に独自の観点を取り入れつつ、もろみの熟成には本格焼酎で培ったノウハウを応用しています。蒸溜には、3基の蒸溜器(銅窯ポットスチール、ストレート型/6t基、同バルジ型/4t×1基。銅とステンレスのハイブリッドポットスチール1基)をオリジナルで設計しました。それぞれ違う酒質を成す3種類の原酒をブレンドしながら、さらに複雑みのある味わいを作り出すことができます。
樽のなかでゆっくりと時間を過ごしながら、ウイスキーはさらに独自の味わいを纏っていきます。原酒が持つ個性と特徴を引き出し、よりよい品質と味わいを求めていくために必要な工程が熟成です。小牧蒸溜所では、小牧醸造の創業以前、幕末期の1800年代後半に建てられた石蔵(鹿児島県重要指定文化財申請中)で貯蔵します。この石蔵を覆う外壁には、希少な加治木石が使われています。加治木石とは、およそ60万年前に噴出した火砕流の擬灰岩で、硬質で堅牢性が高い一方で、多くの気泡を持つため熱を伝えにくく、断熱性・保湿性に優れ、内部の温度、湿度を一定に保つ効果があるという、天然の省エネ石材。これにより、さらに原酒は円熟味を増していきます。
Text: 猪飼尚司 / Photo: 白木世志一
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